こんにちは。
プリズムタワー工藤歯科の副院長の工藤有加です。
今日は、歯茎からの膿で悩んでいる人が、これを読むことで、歯茎から膿が出る理由と、応急処置の仕方、解決策の治療法が選べる第1歩になるように文章を書きました。
気になっているけど、痛みはそんなにないし・・・自分で治す方法はあるのかな?痛みはないから放っておいていい?治療した方がいいのかな?など、悩んでいませんか?
色々な場合の、歯茎から膿が出ている状況を想定して、歯茎から膿が出ている理由と、解決策、注意事項などを説明していきますね!
この内容を知って、歯科医院で相談し、最適な治療法を選択できることで、解決に向かっていきましょう!
歯茎から膿が出ているのを放置していいのか?
結論、歯茎から膿が出ている状態を放置すると、口腔内だけでなく全身の健康にも悪影響を及ぼす可能性があります。
理由としては、歯茎から膿が出る主な原因は歯周病や歯根尖周囲炎などの感染症で、これらは放置すると症状が進行します。また、口腔内の感染症は血流を通じて全身に影響を及ぼすことが知られています。
例えば、歯周病は心臓病や糖尿病、脳卒中などのリスクを高めるとされています。これは、歯周病が進行すると歯周ポケットから細菌が血流に入り、全身に広がる可能性があるからです。また、歯根尖周囲炎は放置すると歯の神経が死んでしまい、最終的には歯を失う可能性もあります。
したがって、歯茎から膿が出ている状態を放置することは、口腔内の健康だけでなく全身の健康にも影響を及ぼす可能性があるため、早期に適切な治療を受けることが重要です。
歯茎から膿が出ている時の注意事項
1. 自己判断での治療は避ける
歯茎から膿が出る状態は、歯周病や歯根尖周囲炎などの感染症が進行している可能性があります。自己判断での治療は症状の悪化を招く可能性があるため、専門的な診断と治療を受けることが重要です。
ただし、痛みが強すぎる場合は、市販の痛み止めを飲んでも大丈夫です。
その後は必ず歯科医院を受診しましょう。
2. 早期治療
感染症が進行すると、歯の喪失や全身への影響が懸念されます。早期に歯科医師に相談し、適切な治療を受けることが重要です。
3. 口腔内を清潔に保つ
歯磨きや歯間ブラシ、口腔洗浄液などを用いて、口腔内を清潔に保つことが重要です。これにより、感染症の進行を防ぐことができる可能性もあります。
また、自分で、膿を手で出すのはやめてくださいね!
4. 健康な生活習慣
喫煙や過度のアルコール摂取は口腔内の健康に悪影響を及ぼすため、これらを控えることが推奨されます。また、バランスの良い食事や十分な睡眠、適度な運動など、健康的な生活習慣を心掛けることも大切です。
ただし、血流の良くなるような、激しい運動や長風呂は避けてくださいね!
痛みや腫れなどの炎症が増す可能性があります。
安静にして健康的でよく睡眠をとって、体の免疫力を高めることも大切です。
5. 定期的な歯科検診
歯周病などの口腔内の問題は初期では自覚症状が少ないため、定期的な歯科検診を受けることで早期発見・早期治療に繋がります。
歯茎から膿が出る原因と対処法
歯茎から膿が出るのは、病気となる原因があります。
自分はどれに当てはまりますか?
歯周病
進行した歯周病が原因の場合、歯と歯茎の境目、歯周ポケットの部分から膿が出ている と言う特徴があります。
その他には、歯を押すと揺れたり、口臭が気になったり、歯が浮いたような感じがしたり、噛みにくかったり、ものが詰まりやすかったり、噛み合わせも前と変わった気がする。
などの特徴があります。
対処法としては、歯周病基本治療(SC(スケーリング・SRP(ルートプレーニング))と、歯周外科治療(フラップ手術・エムドゲイン・リグロス等)があります。
歯科医師によっては、歯が残せる方法もあるかもしれないので、相談しましょう。
歯周病の歯を全部抜いてインプラントにする治療も実は要注意で、インプラントも歯周病になって失ってしまう結果になりかねません。
歯周病治療はきちんとしてくれるクリニックを選びましょう。
歯周病に一回なってしまうと、非常に再発しやすい病気です。
歯周病の治療では、とにかく綺麗にして、口の中のバイキン数を減らし、歯周病をコントロールし続けることが大事です。
また、一時的に歯が長くなったり、スースーと染みるような感覚になるかもしれません。
染みるのは一時的なものなので様子を見てもらう場合が多いです。
染みるのが強かったり、歯が長くなった感じがを治したい場合は、歯茎を元に戻す手術(ルートカバー・ルートカバレッジ)ができる場合もありますので、ご相談ください。
メンテナンス・定期的なクリーニングをして再発しないようにしましょう。
根尖性歯周炎(根尖病巣 フィステル サイナストラクト)
根尖性歯周炎が原因の場合、歯の根本あたりの歯茎から、ニキビのような穴から膿が出ていると言う特徴があります。
その他には
・ニキビのようなものが出たり引っ込んだりすることがある
・痛みはある時もあれば、違和感程度で、痛みがない時もある
と言う特徴があります。
根尖性歯周炎になってしまう原因としては、深い虫歯を放置してしまった結果、神経が死んでしまい根の先に病気ができたり、根の治療をしたけど結果的にうまくいかなくて根の先に病気を作ってしまったりした場合などがあります。
治療法としては、感染根管治療をして、根の消毒をするのが一般的ですが、太いコアが入っていて、根の治療をするのが難しい場合は、歯根担切除術や、歯の再殖(一度抜いて元に戻す方法)を行う場合もあります。
また、場合によっては、穴をMTAセメントで塞いで根の治療をする方法や、エラプションをして治療を試みる方法もあります。
治療が難しい場合は、経過観察をしたり、保存が難しい場合は抜歯する場合もあります。
根の治療については、根の病気は再発しやすいことと、根の再治療するということは、抜歯の危険性が常にある、と言うことは、根の治療をする前に理解していただいておいた方が良い内容です。
治療のリスク、メリット、デメリットは常に理解した上で、治療してくださいね。
根の治療をした歯は、普通の歯と比べると割れたり折れたりしやすいです。
神経と同時に血管も除去しているため、枯れ木のような状態になっているんですね。
なので、歯が割れないために、クラウンと呼ばれる被せ物を入れる必要があります。
根の治療後、被せ物をして一度治療が完了しても、再度、根が感染することもよくありますので、より精度の高いピッタリとした被せ物を入れた方が再発しにくいです。
根の病気の再発の原因の8割が精度の低い被せ物のせいだと言われています。
ピッタリした被せ物じゃないと、間からバイキン感染してしまうんですね。
治療後は、歯が折れないように、歯軋りから歯を守るナイトガードをしたり、被せ物と歯の境目から虫歯や歯周病になる可能性もあるため、定期的なチェックとメンテナンスは欠かせません。
歯根破折
歯根破折している歯の周りは、その歯を支えている骨が溶けている場合が多いです。
その部分から膿が出てきているんですね。
以前根の治療をしたことがある歯や、太い金属製のコア(土台)を入れたことがある歯や、
ブリッジや、入れ歯のバネがかかる歯で使用されて負担加重になっている歯や、歯軋りや食
いしばりから歯を守っていない人や、咬合力が強い人は、歯が割れやすいので、そういったご自覚がある方は、歯根破折が原因で膿が出てきている可能性があります。
治療法としては、多くの場合は抜歯になりますが、症状が強くない場合には、経過観察をすることもあります。
抜歯する場合は、抜歯す血圧や心臓疾患などがある場合、主治医の先生に可能かどうか、医科への対診が必要です。
神経の位置や、上顎洞の位置、その他の歯の位置に、近い場合、周辺の組織に影響がないかどうかレントゲンやCTで確認してからにしましょう。
骨の溶け方によっては、抜歯や除去などの外科処置をしてそのまま骨の治癒を待つだけだと、骨の量が少なく、インプラントを埋めるのがが難しくなったり、ブリッジにしても、骨の形態が悪く、清掃するのが難しくなったりする場合もありますので、注意が必要です。
抜歯時に、インプラント等の次の治療を見据えて、失った骨を再生させるような手術(リッジプリザベーション)を行うと、抜歯後の治癒と同時に、失った骨を補填しながら治癒を促す方法もありますので、歯科医院で相談してください。
智歯周囲炎(親知らずの周りの歯茎の炎症)
親知らずの周りの歯茎が腫れて膿が出てくることがあります。
親知らずが横向きに生えていて完全に萌出していない方や、寝不足やハードワークが続いている方で、体力が落ちている方が、親知らずが腫れる方が多いです。
治療法としては、親知らずの痛みや腫れが強い場合には、まず、抗生剤や痛み止めを飲んでもらったり、抗生剤の軟膏を歯茎に入れたりして、炎症の症状を軽減させることが多いです。
イソジンなどの消毒薬を使うこともあります。
薬で炎症を抑えた後は、お口の中のクリーニングをして、お口の中のバイキン数を減らすことで、親知らずの周囲の炎症を起きにくくすることがでできることも多いです。
あとは、体調が悪いと、腫れが強くなる場合もあるので、寝不足や、体調不良の場合は、しっかり睡眠をとって、体の抵抗力をもとに戻すことも大切です。
急性の痛みなどの症状が治まったら、抜歯するか、経過観察にするどうかを歯科医師と相談してください。
痛みがある時のいきなりの抜歯は極力避けたいですね。
痛い時に抜くのは、腫れや痛みが強く出やすいです。
急性炎症、痛みや腫れを薬などで落ち着かせてからの抜歯が安心です。
インプラント周囲炎
インプラントの周囲の骨が溶けてしまって、膿が出ている場合があります。
以前インプラントを入れた周囲から膿が出ていたり、メンテナンスに通わず、放置した時期がある方が、インプラント周囲炎が進んでしまい、周りの骨が溶けて膿が出てきてしまっている場合が多いです。
治療法としては、抗生剤や痛み止めを飲んでもらったり、抗生剤の軟膏を歯茎に入れるなどをして、炎症の症状を軽減させることをまず行うことが多いです。
イソジンなどの消毒薬を使うこともあります。
その上で、その感染源となっている、インプラントを除去するかどうかを相談します。
とにかくクリーニングをして、インプラントの除去はせず、そのまま様子を見る場合もあります。
注意点としては、膿が出ているからの理由だけで患者様の希望に沿わないインプラントの除去は絶対に避けたいですよね。
インプラントから膿が出ている、でも噛めている・・・
その場合、メリットデメリットを理解して治療を決定したいものです。
除去するリスク、残すリスクを理解した上で、治療方針を決定してくださいね。
抜歯窩治癒不全
抜歯窩治癒不全とは、抜歯した後に、治りが悪くて、抜いた周りの歯茎が痛くて、炎症が起こっている状態です。抜歯した後、歯がないはずの歯茎のあたりから膿が出ている、と言う特徴があります。
治療法としては、まず、抗生剤や痛み止めを飲んでもらったり、抗生剤の軟膏を歯茎に入れるなどをして、炎症の症状を軽減させることをまず行うことが多いです。
イソジンなどの消毒薬を使うこともあります。
その上で、その感染源となっている、残った根の部分を除去するかどうかを相談します。
症状がなければ、そのまま様子を見る場合もあります。
顎骨壊死
骨そのものが露出し、骨そのものから膿が出てきている状態です。
骨そのものから膿が出ていて骨や歯がむき出しになって痛い と言う特徴があります。
その他には、糖尿病やステロイド治療の長期投与によって免疫力が低下していたり、癌で放射線治療をして血流が低下し、骨粗鬆症で骨吸収抑制剤(ビスフォスフォネート、デノスマブ等)を飲んでいいる人になりやすい
という特徴があります。
顎骨壊死の対処法として、まずは洗浄して清潔にしたり、抗生物質や痛み止めなどを飲んでもらって痛みや、腫れなどの改善をはかります。また、抗菌薬を動脈内への点滴注射をすることもあります。
腐っている骨を除去し、清潔にすることで治癒することが多いですが、広範囲に顎骨が壊死してしまったような場合は、顎骨の切除や切断を行い、金属プレートで再建が必要なこともあります。
高圧酸素療法が行われることもあります。
治療不可能な歯でも抜歯しないで残すこともある
歯茎から膿が出ている状態で、歯を健康な状態で残すのは難しく、基本的には抜歯をしなければならないような歯でも、そのリスクを理解した上で、歯を残す選択をすることがあります。
なぜかというと。歯を抜くことは、一時的な痛みや不快感を解消するだけでなく、長期的には噛む力のバランスを崩したり、隣接する歯の位置がずれるなどの問題を引き起こす可能性があります。また、自分の歯をできるだけ残したいという心理的な要素も大きいです。
例えば、歯根尖周囲炎の場合、歯を抜くことで一時的には膿が出る症状は改善しますが、その後の人工歯の装着や噛む力のバランスの問題など、新たな問題が生じる可能性があります。また、自分の歯を残すことで、食事の楽しみや笑顔の自信など、生活の質を保つことができます。
したがって、歯茎から膿が出ている状態でも、そのリスクを理解した上で、歯を残す選択をすることがあります。そのため、治療の選択肢については、自身の生活の質や健康状態を考慮しながら、歯科医師と十分に話し合うことが重要です。
まとめ
歯茎から膿が出る原因と、それぞれの対処法について書きました。
このように、歯茎から膿が出る場合には様々な原因が考えられ、原因や、その歯の状況によって行うべき治療法は違います。
痛みがある場合もありますが、慢性化しているとそれほど痛みを感じないことも多いため、自己判断で、放っておいても大したことないし、そのうちおさまるだろう、と、油断していると、感染が広がって骨が大きく破壊されてしまい、全身に悪影響を及ぼしたり、次の歯科治療が困難になる場合もあります。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!