こんにちは。
プリズムタワー工藤歯科の副院長の工藤有加です。
今日は、
前歯で噛みきれない人が、これを読むことで、前歯で噛みきれない理由と、解決策の治療が選べる第一歩となるように文章を書きました。
前歯で噛みきれなかった私の過去について
食事は元気の源ですよね!
食事で楽しむこと、大事にしたい。なのに・・・
大好きなお肉が噛みきれない、お蕎麦やうどんがうまく食べれない。。。
かつての私がそうでした。
実は、私も小学生時代、開口+出っ歯で、特に、麺がうまく噛みきれず、
ベロと上の歯を上手に使って噛み切る、ということをしていました。
麺は啜って食べる、と言われても啜ることができず、麺もうまく噛みきれない。。。
当時の私は小学生。
知識もなかったので、自分ではどうしようも出来ない、と思っていました。
歯が理由だなんて、当時の私には考えも付きませんでした。
後々、歯学部に入って勉強して、臨床経験を積んで、わかったことがあります。
前歯で噛みきれないのには、理由があったんです!!!
中学の時に矯正治療をしたにもかかわらず、
後戻りしてしまい、矯正しても前歯で噛みきれなかった私。
結婚して子育て中も前歯では噛みきれない歯で、何とか生活していました。
というより、それが日常で普通になっていたので、
前歯で噛みきれないことを、そんなに大きな問題だとも感じなくなっていました。
子育てもひと段落した時に、院長にインビザラインとNEMO矯正システムを併用して矯正治療をはじめました。
現在、噛み合わせと歯並びの最終調整の段階です。
そしてやっと最近、
前歯の噛み合わせも整ってきていて、
私の人生初!
前歯でものが噛み切れるようになりました!!!
・自分が矯正治療を2回も受けた経験
・歯科医師になって最初の10年間大学病院の補綴科での臨床経験
・歯周病専門医指導医の院長と10年以上歯科臨床のことを共有している現在
という経験値を持つ私が、解決できたからこそ、臨床経験も踏まえてお話しできますので、前歯で噛めなくて悩んでいる方のお役に立てるかと存じます。
いろいろな場合の前歯で噛めない状況を想定して、前歯で噛めない理由と、解決策、また、治療を選ぶ上で注意した方が良いことなどを説明していきますね!
・そもそも、前歯で噛みきれない状況が何を引き起こすのか?
・自分が、前歯で噛みきれない理由は何?
・自分に最適な治療の選択は?
・絶対に避けたい治療法。
・治療を受ける前に気をつけたいポイント
を理解して、歯科医院で相談し、最適な治療法を選択できることで、解決に向かっていきましょう!
1、前歯で噛みきれないのは何が問題なのか?
結論から言うと、奥歯に問題を起こしやすくなります。
なぜかと言うと、本来の噛み合わせは、奥歯も前歯もバランス良く噛んでいるものだからです。
噛み切れない噛み合わせ、つまり、歯をスライドしても前歯が当たってこない噛み合わせは、奥歯のみで噛むことになり、奥歯が荷重負担になるからです。
そもそも、歯の役割として、
・奥歯はすり潰すためにある
・前歯は噛み切るためにある
→ なので、奥歯をずらしたときに、
・ 奥歯は間が空いて、
・ 前歯が当たって噛み切れるような噛み合わせ
が本来の噛み合わせなんです。
奥歯ばかりしか当たっていない噛み合わせは、奥歯に問題を起こしやすく、
結果的に奥歯を失いやすいんです。
私もそうでしたが、前歯で噛みきれないことが日常になると、それが当たり前になってしまいます。
長い間、奥歯だけが当たっている状態で歯を使うと、奥歯に負担加重になり、奥歯にトラブルをかかえやすくなります。
結果、虫歯治療や、被せ物や、ブリッジのやりかえなどを繰り返すことになり、
結果、奥歯を失ってしまうことにつながるからです。
なので、前歯で噛み切れない理由と、その治療法を知って、自分のお口の健康に役立ててくださいね!
2、前歯で噛みきれない理由
前歯で噛みきれない理由はいくつかあります。
自分はどれに当てはまりますか?
①開咬(OPEN BITE)
前歯が開いていて、奥歯でしか歯が噛み合ってない状態。
前歯が噛んでいないので、当然、前歯では噛みきれない。
噛みきれない他に、
・「タ行」や、「サ行」が喋りにくい。
・口が閉じにくく、常に口が開いたような感じになってしまう。
・奥歯に負担がかかりやすく、奥歯が欠けたりなどのトラブルが起こりやすい
・ボーッとしているときにベロが出やすい癖がある
という特徴があります。
②上顎前突(出っ歯)
前歯が出ていて、前歯が噛み合っていない状態。
前歯が噛めていないので、当然前歯では噛みれない。
噛みきれない他に、
・唇を軽く閉じようとすると、歯が邪魔をして閉じ切れない。
・口唇が突出していて(いわゆる口ゴボ)、横顔が好きになれない。
・上が口唇を閉じようとすると、アゴオトガイに梅干しのようなしわができる。
・前歯の上下のギャップが5mm以上ある
などの特徴があります。
③下顎前突
上の歯よりも下の歯が出ている状態。
下の歯が出ているので、前歯で噛みきれない。
噛みきれない他に、
・食べ物をうまく噛んだり飲み込んだりすることがしにくい
・口が閉じにくく、うまく話しにくい(特にサ行やタ行が話しづらい)
・下顎が出ている
という特徴があります。
④歯の動揺
前歯が揺れていると、前歯で噛みきれません。
前歯が揺れている、ということは、奥歯で問題を抱えていることが予想されます。
・歯周病
・歯の破折
・虫歯
・歯軋り
・歯の欠損したまま放置していた
などの可能性があり、様々な問題が奥歯にも、前歯にも隠れている可能性があります。
⑤ブリッジや、被せ物の噛み合わせがあってない
ブリッジや被せ物で歯を治療していても、噛み合わせが不良だと、前歯で噛みきれません。
もともと持っているご自身の噛み合わせで、仕方なく、そういった噛み合わせになってしまっている場合もありますし、
被せたり、ブリッジをした土台の歯が揺れてきたり、破折したりして、噛めなくなっている場合もあります。
⑥入れ歯が合わない
入れ歯が合わないと、噛みきれないです。
入れ歯は、そもそも、自分の歯と比べると、噛めるようにならないものなんです。
なので、噛みきれる入れ歯は、
・他の丈夫な歯が多く残っている場合
・インプラントオーバーデンチャーにした場合
を除いては、あまり前歯で噛みきれるような入れ歯になる期待は出来ないと思ってください。
噛みきれない原因が、健康な歯が多い場合と少ない場合で、違うのは、わかっていただけましたでしょうか?
3、この治療で前歯で噛みきれるようになる!
今度は、先ほど書いた、噛みきれない原因に対して、噛みきれるようになるための治療方法が、健康な歯が多い場合と、健康な歯が少ない場合で違うので、それぞれ説明していきます。
①前歯の開口
歯並びを治して、噛み合わせの良い歯並びにすれば、噛みきれるようになります。
下の顎を、奥歯を咬みながらずらしたときに、前歯が当たる噛み合わせです。
その噛み合わせにするためには、
・矯正治療(おすすめ!)
・歯を削って被せる(注意が必要!)
方法があります。
②上顎前突
歯並びを治して、噛み合わせの良い歯並びにすれば、噛みきれるようになります。
下の顎を、奥歯を咬みながらずらしたときに、前歯が当たる噛み合わせです。
その噛み合わせにするためには、
・矯正治療(おすすめ!)
・歯を削って被せる(注意が必要!)
・成長期の子供の場合は、ヘッドギアで上顎の成長を抑制する
などの方法があります。
③下顎前突
歯並びを治して、噛み合わせの良い歯並びにすれば、噛みきれるようになります。
下の顎を、奥歯を咬みながらずらしたときに、前歯が当たる噛み合わせです。
その噛み合わせにするためには、
・矯正治療(おすすめ!)
・歯を削って被せる(注意が必要!)
・成長期の子供の場合は、チンキャップで上顎の成長を抑制する
(下顎の成長が著しい場合は、矯正治療+顎切りが必要な場合があります。)
などの方法があります。
④前歯の揺れ
前歯も奥歯も、揺れないようにして、噛み合わせの良い歯並びにすれば、噛みきれるようになります。
下の顎を、奥歯を咬みながらずらしたときに、前歯が当たる噛み合わせです。
その噛み合わせにするためには、
・歯周病治療
・矯正治療
・歯を削って被せたり、歯を繋ぐような治療
・インプラント
などの方法があります。
上記の方法を組み合わせて、治療計画を立て、奥歯も前歯も噛み合わせの良い状態にすれば、前歯で噛みきれるようになります。
⑤ブリッジや被せ物の噛み合わせが合っていない
噛み合わせの良い歯並びにすれば、噛みきれるようになります。
下の顎を、奥歯を咬みながらずらしたときに、前歯が当たる噛み合わせです。
その噛み合わせにするためには、
・歯周病治療
・矯正治療
・ブリッジで歯を削って被せたり、歯を繋ぐような治療
・インプラント
などの方法があります。
上記の方法を組み合わせて、治療計画を立て、奥歯も前歯も噛み合わせの良い状態にすれば、前歯で噛みきれるようになります。
⑥入れ歯が合わない
入れ歯が合わないと、前歯では噛みきれません。
そもそも、入れ歯、特に保険の入れ歯は、最低限のことができるためだけのものなので、前歯で噛み切れるようになるのは難しい場合が多いです。
ある程度、義歯でも、残存歯や骨の状態がよい場合には義歯でも前歯で噛みきれるようになるでしょう。
方法としては、
・義歯調整の場合→内面を合わせて、噛み合わせも調整する
・入れ歯を新しく作る場合→安定して理想的な噛み合わせになるようにする
・インプラントデンチャーや、コーヌステレスコープクラウンなどを作成し、
✴︎噛んだりしても義歯が動かない、
✴︎理想的な噛み合わせ
の安定した入れ歯を作れば、前歯で噛みきれるようになるでしょう。
4、前歯で噛めるようになる治療法(歯の状況別)
先ほどは、原因別で、解決できる治療法を書いていきましたが、
今度は、自分の歯の状態別で、前歯で噛めるようになるための治療法と根拠について書いていきます。
①自分の歯が十分残っている場合
自分の歯が十分に残っている場合、
・矯正治療で歯を動かして理想的な噛み合わせを作る(オススメ)
・削って被せて理想的な噛み合わせを作る(注意!)
治療が解決策となります。
なぜかというと、
前歯をずらしたときに奥歯でしか噛まない噛み合わせだと、前歯で噛み切れない。
前方にずらしたときに、前歯が合わさる時に前歯で噛み切れるからです。
前歯で噛み切れるようなるには、矯正治療か、歯を削って被せて噛み合わせを整える必要があります。
②歯の揺れや、ブリッジなどの被せ物があり、自分の歯に問題が多い場合
歯の揺れやブリッジがあり、自分の歯の問題が多い場合、
・矯正治療
・インプラント治療
・セラミック治療などの歯を削って被せる治療
・歯周病治療
などの必要な治療を組み合わせて、病気を治し、噛み合わせを整える治療で解決できます。
なぜかというと
歯が揺れるようになったり、ブリッジになってしまった背景には、そうなってしまった理由があり、その原因を解決する必要があります。
そのためには、
・歯周病や虫歯の問題
・噛み合わせの問題
・習慣の問題
あらゆる角度からのアプローチが必要となり、複雑な治療となり、複雑な治療を組み合わせて治療することで、解決につながります。
③入れ歯の場合
入れ歯で噛みきれない場合、入れ歯の状況にもよりますが、
・入れ歯の調整をする(これだけで噛みきれるようになったら本当にラッキー)
・新しく入れ歯を作り直す(保険の義歯だと理想的にならない場合が多いので難しいことが多い)
・インプラントオーバーデンチャーにする
・テレスコープデンチャーにする
などの選択をすることで、前歯で噛みきれるようになる可能性があります。
なぜかというと
合わない入れ歯で前歯で噛み切れないことが考えられるからです。
・入れ歯の調整
・新しく入れ歯を作り直す
・インプラントオーバーデンチャーを作る
という方法で、入れ歯を安定させて、理想的な噛み合わせを作れば、ある程度噛み切れるようになるが、どれくらい噛みきれるようになるかは、その患者様の状況によるところが大きいです。
5、「前歯で噛みきれる」その先の未来
前歯で噛みきれるようにようになったその先に、どんな未来があるでしょう?
それは、
・一生涯、美味しく、前歯で何でも噛みきれる
・どこででも食事ができ、楽しめる
・何でも食べられるから元気でいられる
ということではないでしょうか?
そんな未来が手に入れられたら本当に素敵なことですよね。
6、治療選択時に気をつけたいこと
①セラミック矯正や、セラミック治療、保険のブリッジなどの削って被せる、歯を大きく削る治療
・セラミック矯正
・セラミックブリッジ
・保険のブリッジ
・被せ物
などの歯を大きく削る治療は、決めるときは慎重によく相談してから決めるようにしてくださいね。
歯の状況別で注意したい内容が異なってきます。
・健康な歯が多く残っている場合
→年齢など考慮して、矯正治療などで歯を削らないでできないか考えた方が良いと思います。
特に、若いうちに歯を大きく削る治療をすると、後々、後悔するような結果になってほしくありません。
一回ブリッジや被せ物にすると、再度治療が必要な場合にまた歯を削ることになるので、注意が必要です。
・もともと被せ物やブリッジが入っていてやり直す場合
→何度もやり直していると、歯を余計に削るので、やり直すときは慎重にしてください。
ブリッジや被せ物の再治療を繰り返すごとに、神経がだめになったり、歯の根が折れたりするリスクを伴い、歯の寿命が縮まります。
理由は、再び歯に被せなおすために、さらに大きく歯を削ることになるからです。
歯を削ると
・本来持っている歯の表面の美しさと硬さのあるエナメル質をほぼ失ってしまう。
・その歯の状態や技術や診療レベルの差によって、またその歯が虫歯にならないとは限らない
・歯を削ることで、神経を抜かなければいけなくなる可能性があり、歯の寿命を縮めてしまうことにつながる。
からです。
以上の歯を削るデメリットを踏まえ、メリットの方が大きい場合は、仕方のない場合もあるかと思います。
歯科医師と相談の上、慎重に決めてくださいね。
②歯の一部のことしか考えていない部分矯正
部分矯正は基本的には、理想的ではない治療だと思ってください。
なぜかというと、部分矯正のみで全体が理想的に終われる人はかなり少ないからです。
歯科医師とよく相談して、部分矯正後の歯の全体のこともどうしていくか考えてから治療しないと、後から予想もしていなかった終わり方や、追加の治療が必要になる場合があります。
部分矯正のみで治療すると、
・前歯だけ噛んでいて、奥歯は噛んでないような噛み合わせで終了
・歯を削って被せる治療が必要
になったりして、後で思わぬ治療が追加で必要になったり、最終的なゴール設定が思うように行かなかったりすることが多いからです。
部分矯正は、安価で手に届きやすいので、選んでしまう方も多いかもしれませんが、矯正治療は一部の歯を動かすと、作用反作用の働きで、動かしたい歯以外の歯も動いてしまいます。なので、歯列全体で考える、というのが基本です。
なので、部分矯正をするときは、よく相談してから決めてくださいね。
今の先生で大丈夫かな?と少しでも不安になった場合は、
セカンドオピニオンで他の歯科医師の意見を聞くことも大切です。
そこで、真実は何かを見極める判断力も必要となってきます。
そのためには、複数の歯科医院で、複数の歯科医師の意見を聞くと、真実を見抜ける力も養われるかもしれません。
信頼できる歯科医師のもと、ご自身にとって最適な治療をお受けになれることを願ってやみません。
7、まとめ
前歯で噛みきれないのは理由があり、主な原因は噛み合わせの問題であることが多いです。
前歯で噛みきれないのはどんな噛みあわせ?
↓
歯をずらした時に前歯が当たらず、奥歯でしか噛まない噛み合わせ
反対に噛み切れる噛みあわせは?
↓
歯を前にずらしたときに、前歯があたる噛みあわせ。
なので、
「前歯で噛み切れるようなるには、噛み合わせを整える必要があります。」
そのためには、
・歯周病治療
・矯正治療
・インプラント治療
・セラミック治療などの歯を削って被せる治療
・インプラントオーバーデンチャーorテレスコープクラウン
などから、必要な治療を選択し、これらの治療を組み合わせた治療が必要になってきます。
ただ、将来のことを考えると
・天然の歯を削って被せるのは、デメリットが多いこと
・部分矯正は、治療のゴール設定が甘いか、後から必要な治療が追加になることが多いこと
を理解しておいてください。
以上、前歯が噛みきれなくて悩んでいる方が、最適な歯科治療をお受けになれることを心より願っています。
ネットの情報は、玉石混交です。
正しい情報を得るには、専門医等の話を直接聞くのが、正解だと思います。
特に、口の中は、一人一人状況が全く変わります。
ネットの情報だけで自己診断は非常に危険です。
もっと知りたい、どこに相談したらいいかわからない場合は、いつでもご相談にいらしてください。
最後まで読んでいただいてありがとうございました!