こんにちは。
プリズムタワー工藤歯科の工藤有加です。
今回は、「歯周病安定期治療」「SPT(サポーティブペリオドンタルセラピー)」についてお話ししていきます。
・歯周病安定期治療(SPT)とは何か?
・歯周病安定期治療(SPT)の内容
・患者様にどんなメリットがあるか?
・メンテナンスと歯周病安定期治療(SPT)との違いは?
・歯周病安定期治療(SPT)の頻度について
を書いていこうと思います。
1、歯周病安定期治療 SPTとは何か?
歯周病安定期治療 SPTとは、初診から歯周病の基本的な治療や、歯周病の回復の手術などが一通り終わって、病状が安定した患者様に、これ以上歯周病が進まないようにする歯周病の予防プログラムです。
2020年4月から始まった、「歯周病安定期治療」別名、「SPT(Sサポーティブ Pペリオドンタル Tセラピー)」とも呼ばれています。
初めて知った!なんて声も聞こえてきそうですね。
なぜなら、
・2016年4月の保険の改定で、新しく作られたものである
・SPTの保険での継続的な歯周病の継続管理の制度を導入している歯科医院は限られている
からです。
2016年にSPT制度が新設された当初は、SPT1 ,SPT2の制度でしたが、
2022年にSPTに統合されました。
2016年までは、重度歯周炎の患者様のメンテナンス、予防プログラムとして1〜3カ月おきの定期的なクリーニングなどは保険適応できませんでした。
2016年までは、初診から一通り、歯周病の基本的な治療が終了したら、その後の歯周病を予防する治療や、1〜3カ月おきなどの定期的なクリーニングでの継続的な口腔内の管理は、保険診療で補えていなかったんです。
じゃあ、それまではどうしていたか、というと各歯科医院が工夫をして、皆さんの歯周病の予防に奮闘していたわけです。
2016年に、国が、歯周病予防の、国民の口腔内を健康に保つための大切な枠組みを作ってくれた、と言うことなんですね。
定期的な歯周病予防のためのクリーニングが、保険で可能になった歯周病安定期治療。
当院のような、国が指定した、一定の施設基準を満たした歯科医院でないと、一般的には、この予防プログラムは受けられません。
SPT、歯周病安定期治療が新しく設置されたおかげで、「予防のための定期的な歯のクリーニング」ができるようになったんです。
2、歯周病安定期治療 SPTの内容
初診から、一連の歯周病治療が終わった後に、安定した口腔内を保つために行う歯周病安定期治療。
具体的に、歯周病安定期治療とは具体的にどういうことをするのか?を書いていきたいと思います。
保険診療で、歯周病安定期治療、SPT(Sサポーティブ Pペリオドンタル Tセラピー)に含まれる内容は、
・超音波スケーラーなどを用いた歯茎よりも上の部分の歯石の除去
・超音波スケーラーなどを用いたポケットの深い部分の歯の根の表面の歯石の除去や深いポケットの中の汚れ取り
・歯の表面の清掃 PMTC(プロフェショナルメカニカルトゥースクリーニング)
・患者様ご自身でもプラークコントロールが可能になるための口腔衛生指導
・噛み合わせの調整(ほとんどの場合は必要ないですが必要な場合行います)
です。
また、必要に応じて、病状診査、診断のために
・レントゲン撮影
・歯周病基本検査、精密検査
・ポリッシングブラシ(回転清掃器具)などを用いた、プラークや歯の表面の着色を除去する為の歯の表面の清掃
・歯ブラシや歯間ブラシ、フロスなどの歯の磨き方の口腔衛生指導
・食生活や食いしばりなどの生活習慣の改善の指導やナイトガードの作成
をしていきます。
3、歯周病安定期治療(SPT)と歯のメンテナンスとの違いは何?!保険と自費の内容の違い
歯周病安定期治療は、歯のメンテナンスと一緒ですか?違いますか?という質問がありました。
一応、2022年の保険診療の解釈としての、歯周病安定期治療の位置づけとしては、
メンテナンス
→治癒した歯周組織を長期的に維持していくための、セルフケアとプロフェッショナルケア
歯周病安定期治療 SPT(Sサポーティブ Pペリオドンタル Tセラピー)
→4mm以上の歯周ポケットや歯の揺れが残っているものの、病状安定となっている歯周組織を、継続的な歯周治療で維持していくこと
と定義されているのようですが、多くの歯科医院で行う内容は、共通点が多いです。
それは、
①口腔内の検査
②TBI
③SC(超音波器具による水を出しながらの歯石除去や汚れとり)
④機械的紙面清掃(PMTC Professional Mechanical Tooth Cleaning などとも呼ばれる歯の表面をツルツルにする処置)
⑤歯ブラシ、フロス、歯間ブラシによるPTC(Professional Tooth Cleaning)
が、多くの歯科医院で行われていることです。
これらに、補助的にプラスして、あくまで補助的に行っているものに、
・フッ素塗布
・グルコン酸クロルヘキジジンなどの薬品による、洗口や塗布
が含まれます。
これらの中で、国民皆保健に含む内容もありますが、自由診療で行っている歯科医院もあります。
行うことはほぼ同じ内容が多くても、言葉を変えて、定義の仕方で違ってくるんですね。
同じような内容でも、自由診療でするか、保険診療内でするかも、各歯科医院で異なります。
歯周病は油断するとすぐに再発してしまう病気です。
その再発を防ぐために行う歯のクリーニングは、歯茎の状態が違ったり、呼び方が違ったりするけれど、行うことはほぼ、一緒なんですね。
保険診療で行う内容と、自由診療で行う内容は、各歯科医院で設定の仕方が違います。
例を挙げると、当院では、
・基本的な検査、クリーニング、着色の除去は、保険でできます(この部分も自由診療で行なっているクリニックもあります)
・プラークを染め出して、染め出したプラークの徹底的な除去は自由診療で行なっています。
・パウダーでのメンテナンス(ナノ粒子のパウダーを水と一緒に歯の表面に吹き付けることで、歯を傷つけることなく行う最新予防プログラムの歯面清掃方法です。)は、自由診療のみでおこなっています。
の3点です。
各歯科医院で、
・料金設定の仕方
・保険でどこまで行うか?
・どこで線引きして自由診療の枠組みを作るのか?
が、各歯科医院で異なるので、違うように見えるんですね。
歯周病の初期治療を終えた人で、定期的に歯を綺麗にするクリーニングのために歯科医院に通うことを、
・歯周病安定期治療 SPT
・歯周病予防のための定期的なクリーニング
・歯のメンテナンス
・予防歯科
・PM TC
・クリーニングを含む歯科検診
と色々な呼び方があり、定義は少しずつ違っても、行う内容は、共通点が多いです。
3、歯周病安定期治療 SPTを長期に行った患者様の具体例
当院では,歯周病安定期治療(SPT)を、2020年4月から導入し行なっています。
一通りの歯周病治療が終了した後、その状況が安定し、歯周病が進行しないように、適宜、歯周病検査を行い、
・ポケットの数値が大きくなっていないかどうか
・歯茎の炎症の度合いが大きくなってないかどうか
・レントゲンで歯の周りの骨の状態が悪くなっていないかどうか?
を見ていきます。
ここで、わずかな歯周組織の変化がないかを見ていきます。
その上で、
・歯の表面や歯の根の表面のクリーニング
・歯の表面の着色やプラークの汚れとり
・歯間ブラシやフロスを用いての清掃
・患者様への歯ブラシ指導
・食いしばりや歯軋りなどの生活習慣の指導
を行なっていきます。
このことにより、
当院で何年も継続して歯周病安定期治療を定期的に受けられている患者様は、
「もう抜かなきゃいけないかも?」と言われた歯を、
何年も残して使い続けることができています。
また、歯周病安定期治療を継続することにより、4ミリのポケットが3ミリになったり、歯肉の出血部位が減ったりなど、改善もしています。
また、歯軋りや食いしばりにも気づけるので、歯が折れたりするリスク回避の方法も共有できます。
歯周病安定期治療をすることで、問題を起こりにくくし、現在のお口の状態を安定させて生活することができています。
4、歯周病安定期治療(SPT)が受けられる人の条件も頻度も歯科医院によって違う
患者様にとって、とてもメリットのある歯周病安定期予防治療、SPT(Sサポーティブ Pペリオドンタル Tセラピー)
歯科医院によって、受けられる頻度が異なるのはご存じでしょうか?
通常の歯科医院
・歯周外科処置をされた方
・糖尿病などがある方
→などの一定の条件を満たした患者様に限り、3ヶ月に1回の歯周病安定期予防治療が可能
一定の施設基準を満たしたかかりつけ歯科医院として認められた歯科医院
歯周精密検査で4ミリ以上の歯周ポケットがある患者様に、最短1ヶ月に1回の歯周病安定期予防治療が可能
保険診療内で、予防のための歯のクリーニングを1〜2ヶ月に1回お受けになりたい方は、可能かどうかを歯科医院に問い合わせてみてください。
5、歯周病安定期治療 SPTのメリット〜保険でメンテナンスが可能に〜
メリットの大きい重症化予防治療、SPT(Sサポーティブ Pペリオドンタル Tセラピー)。
メンテナンスは、病気が完治した人のためのもので、
SPTは、病気が残っている人が歯周病が悪くならないように継続して治療するためのもの。
という定義づけがされていますが、両者の行うべき内容にほぼ違いはありません。
よって、
・歯周病安定期治療(SPT)を定期的に受けている
・歯のメンテナンスを定期的に受けている
両者の行っている内容にほぼ違いはありませんので、
歯周病安定期治療(SPT)を定期的に受けている、ということは、歯のメンテナンスを定期的に受けているのと、ほぼ同じことです。
メリットとしては、
・レントゲンやポケットの測定検査で、小さな変化に気がつくことができ、大きな問題を回避することができます。
・歯軋りや食いしばりなどの悪い生活習慣に気がつくことができ、対処することで、歯が将来割れたりするリスクを減らすことができます
・歯に悪い食生活の改善に気がつくことができ、対処することで、毎日の食生活で歯が悪くなるのを防ぐことができます。
・歯科専門の器具で、歯の定期的なクリーニングをすることで、自分では磨き残した歯の汚れを取ることができます。
・プロによる歯の表面の清掃により、歯の表面がツルツルになります。
・歯ブラシ指導による自分のブラッシングの改善ができ、セルフケアの向上ができます。
・歯周病予防ができるので、炎症を減らすことができ、心筋梗塞や、脳梗塞、低体重時出産などを防ぐことができます。
・歯周病原菌が減るので、菌を誤嚥して肺に入り、誤嚥性肺炎になるのを防ぐことができます。
・プロフェショナルケアとセルフケアで自分の歯を長持ちさせることができます。
・結果、インプラントや、入れ歯などになることをできるだけ防ぐことができるので、生涯で歯にかかるお金も、多くの場合少なくて済みます。
・歯周病予防、虫歯予防ができるので、結果、自分の歯が長持ちして、一生涯、自分の歯で美味しくご飯が食べられる可能性が高くなります。
・歯周病安定期予防治療 SPT(Sサポーティブ Pペリオドンタル Tセラピー)
・歯のメンテナンス(検査を含む)
・歯のクリーニング(検査を含む)
・クリーニングを含む定期検診
上記は定義は違うけど、行う内容はほぼ同じです。
これらを定期的にを受けているか、受けていないか、で、将来のお口の健康、もっというと、体全体の健康を手に入れられるか否か、また、QOL(Quality Of Life 生活の質)を保てるか否かの分かれ道になると言っても過言ではありません。
メリットの多い歯周病安定期予防治療、SPT(Sサポーティブ Pペリオドンタル Tセラピー)。
あなたのお口の健康に役立ててくださいね。